「少し回りにくいだけだから、まだ大丈夫だろう」。玄関の鍵のちょっとした引っかかりを、多くの人はそう軽視してしまいがちです。しかし、その小さな不調のサインを放置することは、予期せぬ大きなトラブルと出費を招く時限爆弾を抱えているのと同じ状態と言えます。鍵穴の引っかかりがもたらす最悪の事態、それは「鍵の閉じ込め・締め出し」と「鍵の破損」です。まず、引っかかりを我慢しながら鍵を使い続けていると、ある日突然、症状が急激に悪化し、鍵が全く回らなくなることがあります。それが外出時であれば、家を施錠できずに途方に暮れることになりますし、帰宅時であれば、自分の家を目の前にして中に入れないという絶望的な状況に陥ります。深夜や悪天候の中であれば、その苦労は計り知れません。結局、二十四時間対応の鍵屋さんに緊急出張を依頼することになり、高額な深夜料金や出張費を支払う羽目になるのです。さらに深刻なのが、鍵が鍵穴の中で折れてしまうケースです。回りにくい鍵を力ずくで操作していると、金属疲労を起こした鍵の最も弱い部分に負荷が集中し、ある瞬間に「ポキッ」と音を立てて折れてしまいます。鍵の先端部分が鍵穴の奥深くに残ってしまった場合、それを取り出すのは至難の業です。専門の鍵屋さんでも取り出しに苦労することが多く、最悪の場合は鍵穴のシリンダーごと破壊して交換するしか方法がなくなります。こうなると、単なる解錠作業ではなく、シリンダー本体の部品代と交換作業費が必要となり、費用は数万円単位に跳ね上がります。たかが鍵の引っかかりと侮っていると、本来であれば数千円のメンテナンスで済んだはずの問題が、数万円の出費を伴う大掛かりな修理へと発展してしまうのです。鍵の不調は、住まいの安全に関わる重要な問題です。小さな違和感のうちに、早め早めに対処することが、結果的に時間もお金も節約する最も賢明な方法と言えるでしょう。